5年生の国語の授業の大きなテーマが、「文章を読む前提となる知識を身につけていく」ということです。入試頻出のテーマに関しては、そのテーマに関してどのような議論がなされているか、どのようなワードが使用されるかということについて知っておくことは重要です。
一学期の平常授業においては、入試最頻出の「環境」に関する文章を取り上げました。
夏期講習からは「比較文化論」、日本と外国の文化を比較し、日本文化の特徴を明らかにしていくような文章を取り上げました。
中学受験で取りあげられる文章に関して言えば、日本と比較されるのは、大半がヨーロッパです。そこで、まずヨーロッパについて常識的なことを説明していきました。小学校の社会の学習で世界地理を扱わないこともあり、国の名前を言われてもどこにあるのか見当もつかないという生徒もいますし、大州の名前と国の名前と都市の名前の区別がつかないという生徒もいます。
世界地図を使って、ヨーロッパの位置を確認し、ヨーロッパが国ではなく、「大州」と呼ばれるものの一つであること、このヨーロッパという地域にイギリスやフランスやドイツ……といった国があるのだということから話を始めました。
「こんなことは常識でわざわざ教えることではない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに大人にとっては常識と言っていいことでしょう。しかしながら、小学生にとってはけっして常識と言えるようなものではありません。大州の名前も国名も都市名も全部カタカナで表記されているわけですから、すべてが同列に見えても不思議ではありません。小学校で世界の国々について時間をかけて学習することもありません。小学生にとっては、当たり前などということはないのです。
あくまでもこれは一例ですが、小学生には、大人にとっての「常識」は通用しません。ふつうこのぐらいは知っているだろうと思われるようなことについて、どの程度の知識を持っているかについては、個人差がかなりあります。今回の授業でも個々の生徒があらかじめ持っている知識には、かなりの差がありました。
文章が読めない原因はさまざまですが、「常識がない」・「知識がない」という理由で文章を読むことが苦手だというお子様は少なくありません。「国語ができない」という悩みを抱えて転塾されてきたお子様の中には、文章を読む感覚自体は悪くないのに、さまざまな「知識」が少なすぎて文章を読めないという方が少なからずいらっしゃいます。前提知識を持たない状態で文章を読まされれるという経験は、単に苦痛となるだけで、得るものはありません。それが長期に及べば、読めるはずの文章まで読めなくなってしまう危険すらあるかもしれません。
ヨーロッパについて、常識程度の知識をしっかりと入れた上で、日本とヨーロッパの大きな違いについて述べた文章を読んでもらい、そこに書かれた内容を知識として吸収してもらうよう、これを繰り返し読みました。最初に読む文章は受験で取りあげられるような文章ではなく、知識を入れることを目的としたイントロダクションのような文章です。この内容をしっかりと自分の常識にしてもらった上で、少しずつ文章のレベルを上げていきます。夏期講習の後半も「比較文化」に関する文章を読んでいきます。