中学受験における「午後入試」はすっかり定着したと言ってよいでしょう。
午後入試を実施する学校は年々増加し、多くの受験生が午後入試を受けています。
午後入試にはさまざまな利用の仕方がありますが、最も多いのは「午前中は自分の本当に行きたい学校にチャレンジしたい。そのために午後入試で確実に合格できる学校を受ける」というものでしょう。2月1日の午前中に第一志望を受け、午後に押さえの学校を受ける。仮に午前の試験に不合格になっても午後で合格がもらえていれば精神的な動揺も少なくなり、翌日以後も強気の受験ができる……という側面はあります。ただし、あくまでも「合格がもらえていれば」です。
実は午後入試に関しては「受かるだろうと思っていた学校に不合格になってしまう」というケースが少なからずあります。理由はいくつか考えられます。
(1) 多くの場合、午後入試は同じ学校の午前入試よりも受験者の学力層が高く、同じ難易度の問題の場合は合格最低点も高めになります。
(2) 午前中に志望順位の高い学校を受け、午後に安全と思っている学校を受けるとなると、午後は無意識に気持ちがゆるんでしまう可能性があります。
(3) 午前中に緊張の中4科目の試験を受け、肉体的・精神的に疲れているため、午後になると知らず知らずパフォーマンスが低下する危険があります。
ONEにおいても「午前中の第一志望に合格したものの、午後の押さえ校に不合格になった」という方は、これまでの15年間に数名います。上記のような原因が重なると、そういう結果になることもあるのが午後入試の怖さです。第一志望に受かっていれば笑い話で済むのですが、もしそうなっていなかったなら、その後の受験にマイナスの影響を与える可能性が少なからずあります。
たとえば、2月1日の午前中の試験に失敗し、午後に押さえるつもりで受けた学校にも不合格になるという状況になったとしましょう。その場合、精神的に非常に苦しい状況に追い込まれます。翌日以後、しっかりとメンタル面を立て直さないと、その後の入試で実力を発揮できない可能性が十分にあります。2日の午前中は「心が揺らいでいてもまず合格できる」という学校を受験し、一度気持ちを立て直すことが必要かもしれません。
合格を確実に拾いたいという理由で午後受験をする場合は、上記(1)~(3)のような状況があったとしても問題なく合格できる学校を受けるべきでしょう。少なくとも午後入試を受ける学校については数回は実際に午後入試の過去問を解いて、合格最低点を確実に超えられるということを確認する必要があると思います(過去問で毎回合格最低点を超えていても、過去問の問題集に掲載されているのが午前入試の問題だけというようなケースもありますが、この場合は、全く安心できないということになります)。
午後入試は受験生にとって、受験機会を増やしてくれるという意味において大きなメリットはありますが、失敗をすると大きなダメージにつながる危険性があるということは念頭に置いておくべきだと思います。