受験にはいろいろな数値がついて回ります。偏差値・合格可能性・倍率……、こういった数値については受験情報誌などでもよく取り上げられますし、受験生の保護者の方にとっては関心のあるテーマなのではないかと思います。以前にも何度か記事にしたことはありますが、あらためてこういった数値についてのONEの考え方を何回かにわけて、書かせていただきます。
今回は、模試の偏差値について。
これをめぐって、受験生や保護者の方は一喜一憂されることもあるかと思います。しかし、この偏差値というもの、取り扱いを間違えると、大きな問題を引き起こす可能性が少なからずあります。
以下はONEの過去の卒業生の模試(合不合判定テスト)の9~12月の4科目の偏差値推移、平均偏差値、そして実際に合格した学校の80%偏差値の抜粋です。
※ スマホではデータが全て表示されない可能性がありますので、ご了承下さい。
9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 平均 | 合格校の偏差値 | |
aくん | 64.5 | 66.4 | 71.6 | 69.1 | 67.9 | 73/71/61/52/52 |
bさん | 48 | 57.2 | 58.4 | 57.8 | 55.4 | 69/61 |
cくん | 47.1 | 55.7 | 54.8 | 53.8 | 52.9 | 64/55/45 |
dくん | 41.5 | 53.7 | 58 | 51.9 | 51.3 | 57/43 |
eくん | 41.9 | 53.8 | 56 | 53 | 51.2 | 60/55/57/45 |
fくん | 50.5 | 48.3 | 55.6 | 50.1 | 51.1 | 60 |
gくん | 51.1 | 50.6 | 48.2 | 50 | 60/56 | |
hさん | 48.5 | 48.6 | 52.1 | 49.7 | 59 | |
iさん | 48.1 | 43.9 | 52.4 | 50.3 | 48.7 | 61/56 |
jくん | 44.6 | 45.4 | 48.7 | 50.6 | 47.3 | 55 |
kくん | 41.3 | 50 | 49.3 | 45.8 | 46.6 | 58/57/45/45 |
ごらんいただいてわかるように、模試でとっていた偏差値と実際に合格した学校の偏差値にはかなりの開きがあります。卒業生のごく一部の抜粋ですが、ONEの卒業生のほとんどが上記のデータのように、模試でとった偏差値よりも高い偏差値の学校に合格しています。合格校の中に生徒たちが模試でとった偏差値よりも低い偏差値の学校が一校もないという方もいらっしゃいます。大手塾であれば「この成績でそんな受け方をするのは無謀だ」と言われるかもしれません。
しかし、彼らは無謀なチャレンジをして運よく合格を勝ち取ったというわけではありません。
彼らが模試の偏差値よりも高いレベルの学校に合格したのには理由があります。模試の偏差値が志望校の偏差値に足りなくても、ある条件を満たせば合格の可能性は高いですし、模試の偏差値が志望校の偏差値を超えていても、ある条件を満たすことができなければ不合格になるリスクは高いです。
模試というものは、幅広い学力の受験生が受験します。これに対応するために、模試には平易な問題も入っていますし、相当に難度の高い問題も入っています。偏差値30台~70台のさまざまなレベルの学校に対応するため、とにかくいろいろなレベルの問題が並んでいます。必然的に分量が多くなります。このようなテストでは「平易な問題でミスをしない」・「難しい問題、解けそうもない問題はとばす」・「スピーディーに問題を処理していく」というようなことをできる生徒は高偏差値がとれる可能性が高いと言えます。しかし、「難問をじっくり考えて解決する力はあるが、スピーディーに大量の問題を処理していくことは苦手」というような学力特性の生徒は、思うような偏差値を取ることは難しいかもしれません。
実際の入試問題というのは、模試とは性質が大きく異なります。実際の入試で偏差値25~75の受験生がまんべんなく受ける学校などというものは存在しません。最難関校と中堅校では、受けに来る受験生の学力層が異なります。たとえば偏差値45~55ぐらいの生徒が受験するという学校の場合、超難問は出す必要はありませんし(誰もできない)、かと言って誰もができるような問題を出す必要もありません。すべての学校は、受験する生徒の学力層に合わせ、「こういう学力を持った子に入学して来てほしい」という思いをもって問題を作成しています。
たとえば、ある中学校が合不合判定テストと同じコンセプトの問題を毎年出題しているとすれば、合不合判定テストの結果で合否を予測することは可能でしょう。しかし、私立中学の中で模試と同じコンセプトの出題をする学校などどこにもありません。
実際の志望校の入試問題(過去問)でしっかりと点数が取れる(毎回のように合格最低点を上回る)のであれば、模試の成績などどうでもいいのです。逆に志望校の問題で思うように点が取れないのであれば、いくら偏差値が合格ラインをクリアしていても不合格になる可能性は高いと言えるでしょう。
大手塾では模試の成績をもとに志望校選択や受験校の決定が行われることが多いようです。「この偏差値では第一志望は変更した方がいい」と言われて、志望校をあっさり変更してしまっていいのか、「この学校については合格可能性80%以上なので、合格はほぼ確実です」と言われて、安心してしまっていいのか。よくよく考えなければいけない問題だと思います。