読書について、以前に記事にしております。→ 読書の効果と子どもが本好きにならない理由
実利を求めず、純粋に読書を楽しむことができれば、そこからはいろいろなことを学べます。「勉強になるから」といって、目的のための手段として読書をしても、書物はあまり多くを語りかけてはくれないでしょう。
楽しく読む、夢中になって読むということができる素材が身の周りに転がっているような環境の整備が大切だと思います。もし、保護者の方が子どもに読んでほしいと思っている作品があるのであれば、それを「読みなさい」と言って与えるのではなく、置いておくことです。
楽しく読む、夢中になって読むということができるのであれば、読むものは活字の本でもマンガでもよいと考えます。
ONEでは、生徒たちが読める本やマンガを配置している本棚があります。授業の前に早めに来た4,5年生が読むことができるようにしています。4年生は現在もっぱらパズルゲームをやっていますが、5年生の中にはマンガに読みふける生徒もいます。スペースの関係上、それほど数は多くはありませんが、手塚治虫さんの『ブラックジャック』のような古典的名作、こうの史代さんの『この世界の片隅に』のような話題作など、生徒に読んでほしいと思う作品を並べてあり、「読みたければ読んでいいよ」という形で、自由に手に取れるようにしてあります。
さすがに6年生になると、やらなければいけないことが多いので、授業前にマンガを読んでいる生徒はいませんが、現6年生の中にも5年生の頃は夢中になってマンガを読んでいる生徒はいました。生徒たちは勉強だと思ってマンガに読みふけっていたわけではなく、楽しみながら読んでいたのですが、結果的にそれが文章を読んだ時の頭の動きや心の動きに明確にプラスの影響を与えています。
ところで、マンガを読むことは必ずしも簡単なことではありません。マンガを読めないという人も存在します。4コママンガは上から下に読めばいいのですが、それ以外のマンガだと、どういう順序でコマを読んで行ったらいいのか、わからないのです。日本のマンガは右綴じなので、左から右に読むことはないでしょうし、下から上に読むということもないでしょうが、それ以外にははっきりとしたルールがあるわけではありません。
上のコマ割りのマンガはどの順番で読むのが正解でしょうか? 二通りの可能性があります。
⑴ C→B→A→F→E→D→H→I→G
⑵ C→F→H→I→B→E→A→D→G
上記二つのうち、どちらが正解かはストーリーの展開などを基に読者が瞬時に、無意識に判断しているのです。つまりマンガを読むことは、与えられた絵やセリフをもとに話を組み立てていくトレーニングになっているのです。活字の本であれば、文字を上から下に追っていけば読めますが、マンガは読む順序の決定を自分でしなければならないという難しさがあります。
「文字だけでなく絵も載っているから、マンガの方が簡単」などということはありません。活字の本とマンガでは、読むために要求される能力や読むことで鍛えられる能力に異なる部分もあるのです。