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中学受験における偏差値と合格可能性の関係について

受験にはいろいろな数値がついて回ります。何回かにわけて、それらの数字の捉え方について書かせていただきます。

今回は、模試の偏差値について。これをめぐって、受験生や保護者の方は一喜一憂されることもあるかと思います。これらの数字の意味について、われわれの考えを書かせていただきます。

まずは偏差値について。

9月 10月 11月 12月 平均 合格校
A君 50.5 48.3 55.6 50.1 51.1 芝(60)
B君 35.3 30.0 34.5 33.3 関東学院(48)
C君 42.8 42.0 50.7 45.2 世田谷学園(55)・成城(53)
Dさん 43.4 42.2 41.9 45.8 43.3 大妻(56)・山脇学園(52)
Eさん 38.6 41.3 44.8 51.9 44.2 晃華(55)
Fさん 35.5 38.2 39.4 39.9 38.3 富士見(49)・東京電機大(47)

上の表は一昨年、当塾の2017年度の卒業生の9月~12月の模試(四谷大塚・合不合判定テスト)の四科目の偏差値と合格校をまとめたものです。学校名の横の(  )内の数字は合格可能性80%とされている偏差値です。卒業生全員のデータではなく抜粋ですが、他の生徒に関してもほぼ同様の傾向になります。

ごらんいただいてわかるように、模試でとっていた偏差値と実際に合格した学校の偏差値にはかなりの開きがあります。さらに見ると、合格校の中に生徒たちが模試でとった偏差値よりも低い偏差値の学校が一校もありません。大手塾であれば「この成績でそんな受け方をするのは無謀だ」と言われるかもしれません。

しかし、彼らは無謀なチャレンジをして運よく合格を勝ち取ったというわけではありません。

実はこれにはからくりがあります。模試の偏差値が志望校の偏差値に足りなくても、ある条件を満たせば合格の可能性は高いですし、模試の偏差値が志望校の偏差値を超えていても、ある条件を満たすことができなければ不合格になるリスクは高いです。

模試というものは、受験者が偏差値25~75ぐらいの生徒が受験するものです。これに対応するために、模試には平易な問題も入っていますし、相当に難度の高い問題も入っています。偏差値30台~70台のさまざまなレベルの学校に対応するため、とにかくいろいろなレベルの問題が並んでいます。必然的に分量が多くなります。このテストで高得点を取るためには、「平易な問題でミスをしない」・「難しい問題、解けそうもない問題はとばす」・「スピーディーに問題を処理していく」というようなことが要求されます。

しかし、実際の入試問題というのは、性質が大きく異なります。偏差値25~75の受験生が幅広く受ける学校などというものは存在しません。たとえば偏差値45~55ぐらいの生徒が受験するという学校の場合、超難問は出す必要はありませんし(誰もできない)、かと言って誰もができるような問題を出す必要もありません。すべての学校は、受験する生徒の学力層に合わせ、「こういう学力を持った子に入学して来てほしい」という思いをもって問題を作成しています。

たとえば、ある中学校が合不合判定テストと同じコンセプトの問題を毎年出題しているとすれば、合不合判定テストの結果で合否を予測することは十分可能です。しかし、私立中学の中で模試と同じコンセプトの出題をする学校などどこにもありません。

実際の志望校の入試問題(過去問)でしっかりと点数が取れるのであれば、模試の成績などどうでもいいのです。逆に志望校の問題で思うように点が取れないのであれば、いくら偏差値が合格ラインをクリアしていても不合格になる可能性は高いと言えるでしょう。

大手塾では模試の成績をもとに志望校選択や受験校の決定が行われることが多いようです。「この偏差値では第一志望は変更した方がいい」と言われて、志望校をあっさり変更してしまっていいのか、「この学校については合格可能性80%以上なので、合格はほぼ確実です」と言われて、安心してしまっていいのか。よくよく考えなければいけない問題だと思います。

 

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