宿題と科目特性についての第二回目です。一回目の記事はこちらから→宿題と科目特性(1)
ONEでは、宿題を内容の習得だけを目的としたものとは位置づけてはいません。宿題を使って「やらなければいけないことを期限まで意味のある形で解決する」という行動原理を身につけるということが、より重要であると考えています。
この目的のためには「できている・できていない」、「わかる・わからない」の判断を生徒自身がある程度的確にできる必要があると前記事で述べました。この点において、国語の長文読解の問題は運用が難しいというのが今回のテーマです。
ある文章を読んで、その内容を理解できたかと問われれば、たいていは「理解できたような気がする」とか「あまりよくわかっていないような気がする」という曖昧な答えになるでしょう。当然のことながら100%正しく理解することは誰にも(筆者にも)できないわけですから、曖昧であることはある意味では当然であって、悪いことではありません。
どこまで理解できたかを確認するために「問い」があるわけですが、実はこの「問い」の答えは「ただ一つ」に決めることができません。下の例を見て下さい。
問題 傍線部1「太郎は泣いた」とありますが、なぜ太郎は泣いたのですか。(文章は省略します)
解答例①「テストで0点をとったから。」
解答例②「テストで0点をとって、母に怒られたことが悲しかったから。」
解答例③「おかあさんに怒られて悲しかったから。」
解答例④「いつもは高得点がとれるテストで0点をとってしまいプライドが傷ついたうえに、母におこられて悲しかったから。」
上の四つはある問いに対する生徒の答えです(文章は省略します)。この四つの答えのどれが正しく、どれが間違いなのでしょうか。本文の理解としてはどれも間違ってはいません。しかしながら、どれでも正解になるというわけではありません。
文章の読解や記述することに対して苦手意識が強く、問題を与えられても手が止まってしまって、答えを書くことがままならないという生徒であれば、どの答えを書いてきてもマルを与えます。しかし、国語が得意で、長い字数の記述を重視した出題をする学校を志望している生徒が①や③の答えを書いてきたらバツです。①~④のどれも文章の理解という意味においては間違いではないのですが、受験においては問題を出す側の要求値(学校ごとの入試問題の特性)によってマルになったり、バツになったりします。④の答えも「30字以内で」という答えについての条件が加わればバツになります。
国語という科目においては、特性上、解答が一つに決まらないということが多々あるため、自分ができたのか否かの判断を生徒自身で行うことは困難です。したがって国語の長文読解問題は、教師が生徒に直接対応できる状況下で行うことが望ましいと考えます。教師が生徒に1対1~1対3ぐらいの少人数で対応できる状況がいつでも確保できればいいのですが、残念ながらそれは現実問題としては不可能です。授業の場合はもっと多い人数(10~15名)で大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、授業においては同じ時間帯にみなが同一の文章を読み、また一題ずつ同じ問いに取り組んでいるので、対応が可能なのです。
ひとりで行う宿題においては、問題を解いた際に「よし、これはできた」という実感を持てることが重要です。それがあるからこそ、逆に「できない」ときには質問に行くという行動を覚えることができます。算数や理科・社会は答えが一つに決定します。状況によって答えが変わるということがありません。生徒が自分ができているのか、できていないのかをはっきりと認識しやすい科目です。
しかしながら、算数と理科・社会は同じように扱うことはできません。「やらなければいけないことを期限まで意味のある形で解決する」という行動を身につけるための宿題としては、算数がもっとも適しています。理科・社会については、次回の記事で書かせていただきます。