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辞書に関する考察

辞書を引くことは悪いことではありませんし、中学・高校・大学と勉学を進めていく段階では、辞書は学習には不可欠なものです(もっとも「英和辞典」は使っても「国語辞典」はあまり出番はないかもしれませんが)。

しかしながら、小学生が辞書を引いた場合、いろいろと弊害が起きる可能性があります。このことについては以前にも記事を書いておりますが、加筆修正する形で再度記事にさせていただきます。

たとえば、ある国語の問題文の中に、「生態系」という言葉が使用されており、その意味がわからなかったとしましょう。こういうときに辞書を引きなさいというアドバイスがされることはよくあります。では、実際に辞書を調べてみましょう。

「ある地域に生息するすべての生物群集と、それを取り巻く環境とを包括した全体。エコシステム。(デジタル大辞泉)

この説明を読んでどれだけの小学生が理解できるでしょうか。「生物群集」・「包括」・「エコシステム」などという言葉を知っていて、「ああ、なるほど、そういうことか」と合点がいく小学生など、ほぼいないでしょう。要するに、辞書を引いたところで「生態系」のイメージはつかめないのです。

しかしながら、「辞書を引く」という手間と時間のかかる作業をしたことで満足してしまい、辞書の説明をノートに書き写し、「わかった」ような気になってしまうかもしれません。これに何の意味もないことは明らかです。

小学生のお子様は、通常、強制されない限り、辞書を引くということはしません。引いてもそこから有用な情報を引き出せないことを経験的に知っているからです。しかし、強制されれば辞書を引くことになり、無駄な時間と労力を使うことになります。

生徒には「意味のわからない言葉については、必ず質問をしなさい」と指示をしています。質問が出ないときは、「〇〇とは、どういう意味?」とこちらから質問をすることもあります。そこで答えられないと、わからない言葉をそのままにしようとしたことについて注意をしています。

言葉の意味の質問に対しては、単に辞書的な説明をするのではなく、実際の用例を示したり、似たような意味合いの言葉と比べたりしながら、言葉のニュアンスを感じ取ってもらうようにしています。たとえば、先ほどの「生態系」の場合であれば、実際の「生態系」の具体例となるようなことがらをいくつか挙げ、言葉の輪郭をつかんでもらうということをします。説明をした後で、今度はそれを生徒に説明させたり、ノートにまとめさせたり、文章を繰り返し読んで文章の中で意味を確認したり、翌週にテストで確認したり、宿題で確認したり……といったことを通じて、時間をかけて言葉の意味を定着させていきます。

辞書については、中学生になると「英和辞典」は必要になるかと思いますが、「国語辞典」の必要性はあまりありません。中学生が読む抽象度の高い文章に使用されることばの意味など、辞書の説明を読んでも何のことやらわからないということが大半でしょう。下の「アイデンティティ」の説明を読んだところで、全く意味のイメージは湧かないと思います。

実際問題、国語辞典を使うシチュエーションがあるとしたら、文章を書く際に「漢字が思い出せない」ときぐらいでしょう。しかし、手書きで文章を書く機会が極めて少なった現代においては、もはやその必要もあまりないかもしれません。

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