当ブログにおいてアクセスが多い記事に、「漢字」に関するものがあります。ご興味を持たれている保護者の方も多いようなので、過去記事に加筆修正を加えて再度アップしておきます。
学習相談におみえになる他塾生の保護者の方の中には「うちの子は漢字が苦手で……」とおっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。毎週の漢字テストはできているのに、範囲がないテストでは全く漢字が書けないというようなことを心配されていることが多くあります。しかし、そのこと自体は、それほど大きな問題ではないというケースが少なくないと考えます。今回はこのあたりのことについて、書かせていただきます。
学校や塾の漢字テストというのは、いわゆる「書き取りテスト」であることが多いと思います。教師側があらかじめテストで出題する漢字の範囲を示し、それを生徒に家庭で覚えてきてもらい、覚えたかどうかをテストでチェックするというものです。場合によっては、テストの前に「10回ずつ書いてきなさい」というような宿題が出されることもあるかもしれません。
出題される問題がわかっているのですから、とりあえず出題される漢字の読み方と意味を覚えていけば点数は取れます。しかしながら、こうやって良い点数を取れたお子様が、意味ある形で漢字を学習できていたかどうかといえば、そうではないケースが少なからずあるのではないかと思います。
漢字は書けることよりも、読めること、意味がわかることの方が重要です。
上記は2022年度入試での攻玉社中と雙葉中の書き取り問題です。
攻玉社の5題と雙葉の8題、大人でも、日常的に文章を書く習慣のある人でないと全て正解することは難しいのではないかと思います。
しかし、「認証・回覧・首班・没頭・熟れた」「可否・圧巻・発揮・右往左往・需要・一律・干潮・輪唱」と漢字で書かれていれば、大人はみな読めますし、意味もわかります。これがどういうことを意味するか言えば、漢字は読めて意味が分かるのであれば、書けなくても「困らない」ということです。書けなくて困るのは「書き取りのテスト」や「入試」の場だけであって、日常生活で漢字が書けなくて困るということは今やほぼないのではないでしょうか。カナで文字を入力し、変換キーを押した際に画面に並ぶ漢字から、適切なものを選べればよいわけですから、「読める」・「意味がわかる」でほとんど不自由はないのです。
出題される問題がわかっている漢字テストというものは、漢字の「意味」がわかっていなくても正解することができるテストです。表意文字である漢字において、最も重要な要素である「意味」をぬきにして「読み方」と「形」だけを覚えることにどれだけ価値があるのでしょうか。
「10回ずつ漢字を書きなさい」などという宿題が出され、いやいやながら漢字を練習しているお子様に「これ、どういう意味?」と問うた際に、答えが返ってこないなどということもあります。こんな形で漢字を学習することに、大きな意味はありません。
「漢字テストの点数が悪い」という場合、漢字を書けないだけなのであれば大きな問題はありません。
漢字は読めて意味がわかるのであれば、文章の読解等で支障をきたすことはないのです。たくさん本を読んでいて、難しい漢字でも読めてしまうお子様が、なぜか学校の漢字テストで苦労しているなどという場合は、お子様にとって漢字テストのための勉強が無意味なことに思われ、覚えるために時間やエネルギーを割かないことが原因でしょう。
漢字は読めること、意味がわかることこそ重要です。
漢字の書き取りテストの点数がふるわなくても、それ自体は問題ではありません。書き取りができないのみならず、漢字を読むこともできないし、意味を理解することもできないというような状況であれば、放置しておくことはできないでしょうが、その場合も「書き取り」ではなく、「読み方と意味」を身につけることに注力すべきであると考えています。