中学受験における志望校選びはとてもたいへんなことであると思います。東京には多くの私立・国立・都立の中学校があり、その中から数校の志望校を選ぶのは、簡単なことではありません。
中学受験をされるご家庭の多くは「お子様の成長のためにできるだけよい環境で6年間を過ごさせたい」ということで受験勉強をスタートさせるのだと思いますが、ではいざ「成長のためにできるだけよい環境」ということで学校を探し始めると、はたして何がよい環境なのか、戸惑ってしまうこともあるのではないでしょうか。
その際、学校ごとの大学の合格実績や偏差値というのは、わかりやすいので、どうしてもこれを学校選びの基準にしてしまうというケースは少なくありません。しかしながら、大学合格実績がよい学校や偏差値が高い学校に進学すれば難関大学への合格が約束されるというわけではありません。どんなに合格実績が優れた学校であっても、そこで思うように学習が進まず、結果として意にそわぬ進路の選択を余儀なくされる生徒はいます。
大学進学実績や偏差値は一つの志望校選びの要素にはなりますが、大学進学実績や偏差値は「成長のためにできるだけよい環境」を約束するものではありません。志望校選びにおいては、お子様の能力の特性や性格とその学校の指導とのマッチングを考えなければなりません。
保護者の方は、志望校を決定する前に、お子様の通う塾を選択されます。その際、何を重視して塾選びをされるでしょうか。合格実績を比較し、難関校への合格者が多い塾に入れるという方もいらっしゃると思いますが、そこでの学習がうまく軌道に乗り、順調にできるようになっていくという子ばかりではありません。
お子様の成長が見られない場合、塾であればやめてしまって、他の塾に移るということのハードルはさほど高くありません。5年生の前半ぐらいまでであれば、転塾にともなう問題もさほど大きくはありません。
しかし、志望中学を選ぶ場合、入学した学校がお子様に合わないからという理由で自主的に退学し、他の学校に入り直すということは、不可能ではありませんが、いろいろと問題が生じます。編入学が可能な学校は限られるでしょうし、公立中へ移って高校受験というのにも様々な困難を伴います。学校を中途でやめる場合は将来的に履歴書にも記入しなければならなくなります。そういう意味では、中学受験の志望校選びは、失敗が大きな痛手になる選択なのです。
見事に第一志望に合格しても、その学校の教育の在り方とお子様の性格や学力特性がマッチせず、不登校になってしまうというような子もいないわけではありません。大学合格実績や偏差値では、お子様と学校の相性はわかりません。
お子様の性格や能力の特性をふまえ、お子様の成長にとってより良い環境を探すという原点を忘れずに、学校選びをしていただければと考えております。