文章を書く人は必ず読者を想定しています。たとえば『勝つための将棋 居飛車の研究』という本は、趣味として将棋をたしなむ人を対象に書かれています。将棋をさしたことのない人、ルールすら知らない人などは相手にしていません。だから、将棋はどうしたら勝ちになるとか、駒の並べ方とか、桂馬はどう進むとか、といったことは当然知っているだろうという前提のもとに書かれています。想定された読者の知識レベルに達していないのであれば、その文章は読めません。
どんなに国語が得意だという人であっても、この想定された読者の知識レベルに達していないなら、その文章は読めません。こうすれば読めるというようなことを説明している国語の教師も『左冠動脈近位部血流の検出率と検出時間における機種および検者依存性に関する検討』などという医学論文を読めと言われたら、お手上げです。これは、心臓外科医や心臓外科医を目指す医学生などを読者として想定しているので、そうでない人には何のことやらさっぱりわからないのです。
中学受験で取り上げられる文章、特に論理的な文章は小学生を対象に書かれたものではないことがほとんどです。したがって、中学受験をする生徒は、小学生のレベルを超えた知識や教養を身につけておくべきだということになります。少なくとも受験で取り上げられる文章の頻出テーマに関しては、そのテーマに関連する知識はつけておいた方がよいでしょう。
5年生の国語の授業では、この「読解の前提となる知識や教養」を身につけるということは重要なテーマの一つです。
これからしばらくは「環境」に関わる文章を読んでいきます。「環境」に関わる文章は、受験において最頻出と言ってもいいでしょう。
今回は「生態系」について、学習してもらいました。「生態系とはどのようなものか」・「生態系が破壊される原因としてどのようなことが考えられのか」といったことについて説明をし、聞いた内容を自分なりに紙面にまとめてもらった上で、説明された基本的な知識がまとめられた文章を読んでもらいました。
繰り返しこの文章を読んでもらい、そこに書かれたような内容については当たり前のこととして十分に理解できているという状態を作ることが重要です。次回の授業では、授業で説明した内容、文章に書かれていた内容について、頭の中に入っているかどうかを確認していきます。