4,5年生の国語の授業において、本文の内容を要約してもらったり、あらすじを書いてもらったりという作業(記述)をしてもらうことがあります。お子様の書いた記述について、こちら側でバツをつけるということは皆無ではありませんが、ほとんどありません。保護者の方から見て、お子様の記述が不十分なものであるにも関わらず、バツがついていないことについて、「直さなくてもいいのだろうか」と心配になることもあるかもしれません。今回は、この点について述べさせていただきます。
最初に一つ例として問題を載せます。
Q 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
太郎は一匹の犬を飼っていた。名前はシロ。太郎がまだ小学校1年生だった冬のある日、校門の前に捨てられていたのを拾ってきたのだ。太郎はシロをかわいがり、シロは太郎にとてもなついていた。太郎のあとをいつもくっついて回っていた。
そのシロが三日前に車にひかれて、死んでしまったのである。太郎は三日間、何も食べず、学校にも行かず、ただただ泣いていた。
問い 太郎が三日間泣いていたのはなぜですか。
次にいくつかの解答例を挙げてみましょう。
A シロが死んだから。
B 悲しかったから。
C シロが死んで悲しかったから。
D 自分になついていた愛犬のシロが交通事故で死んでしまい、とても悲しかったから。
E 何も食べず、学校にも行けなかったから。
上のEは明らかに間違いです。もしこの答えを書くようであれば、明らかな誤読をしています。もう一度文章を読ませ、しかる後に再度書かせたり、口頭で答えさせたり、何らかのフォローをする必要はあります。今回問題にしたいのは、こういう明らかな間違いではない解答です。
問題集の模範解答であれば、Dの答えに近いようなものになるでしょうが、4,5年生の時期にこういう答えをいきなり書ける生徒は多くはありません。AやCの答えを書く生徒の割合が高いと思われます(Bの答えを書く生徒は意外なことに少ないです。その理由については本題から外れますので省略します。)。
ところでA~Cの解答はいずれも間違いではありません。お子様がA~Cのような答えを書いてきたときにどうするかは非常に重要です。
4,5年生の段階において、A~Cにバツをつけることは危険だと考えます。なぜなら間違っていないのですから。Eは明らかに間違いですが、A~Cについては、正しく文章を読めている可能性は十分にあります。
AやCがダメだというのは、問題を作成している側の都合でしかありません。たとえば「10字程度で答えなさい」という条件がつけば、Dは字数オーバーで0点になります。
たとえばお子様がAの答えを書いてきたら、バツをつけず、以下のような追加質問をします。
「シロが死んだときの太郎の気持ちを答えなさい」
同じくBの答えを書いてきたお子様には、「なぜ太郎は悲しかったのですか」と問い、Cの答えを書いたお子様には「シロは太郎にとって、どのような存在でしたか」というような問題を付け加えるのです。追加した問題にも正解できるのであれば、文章はしっかりと読めているので、大きな問題はありません。
A~Cのような正しい答えを書いたのにバツをつけられるという経験を重ねてしまうと、国語という科目に対して「どうせ書いてもバツになる」・「自分には読解力がない」というネガティブな感情を持ってしまうリスクがあります。
そのためONEでは、お子様の記述した答えについては、完全な間違いでない限りはバツをつけることはほとんどありません。もちろんバツがつかないからマルだというわけではありません。間違いではないのですが十分とは言えないので、修正してもらったり、追加の問いに答えてもらったりということをしています。
読解問題の設問は、文章を正しく読めているかどうかを調べるためのものです。正しく読めているのであれば、形式的な不備に関しては4,5年生の時点ではあまり気にしなくてもよいと考えています。