前回、前々回の授業で二週にわたり新見南吉の『うた時計』という作品を読みました。
こちらで読めます。→ https://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/1753_18682.html
一週目はあえて中途半端なところで読むのを中断します。生徒たちが「この先はどうなるのだろう?」・「続きが読みたい」というようなことを言っている状態で「続きは来週」という形で授業を終えます。生徒はその後の展開について、「こうなるのではないか」と予想したり、「こうなってほしい」という願望を口にしたりしています。
そして二週目、前週の内容を思い出し、「早く読みたい」という状態になったところで文章の続きを読んでもらいます。今回は「やっぱり男の人は周作さんだった」と予想が的中したことに満足している生徒がいる一方、もう少し意外な展開を期待していた生徒もいました。
問題は一切解いていません。先の展開を予想した生徒は、問題を与えられたわけではなく、「この先はどうなるんだろう」と楽しみつつ自分で考えたのです。
4年生の時期に最も重視していることは、生徒が文章を読むことに対してネガティブな感情を持たないということです。文章を楽しく読む、読んだ内容につきあれこれと思いをめぐらすということができることは非常に重要なことです。
問題を解くために文章を読まされ、書いた答えについて間違いを指摘されるというようなことを繰り返していたら、文章を読むことが嫌いになり、前向きな気持ちで文章を読むことができなくなってしまうかもしれません。一度文章を読むことにネガティブな感情を抱いてしまうと、これを修正するのは簡単なことではありません。
受験においては問題を解くことが要求されますし、それに対応するために練習をする必要はありますが、その前にやるべきことが多々あると考えます。
「何かを知りたい」とか「楽しみたい」という前向きな思いを抱いて文章を読まなければ、文章の深い理解に到達することは困難です。いやいや読んでいたのでは、文章は多くを語ってはくれません。まずは文章に対して、ポジティブな姿勢を作ること、少なくともネガティブな感情を持たせないということを重視して授業を進めていきます。